2024-09-23
中編。古書ディーラーのエメット・リーがぐう先手にした古書に挟まれていた手紙。エメット古書マニアらしい興味から、その手紙の由来を調査し始める。古い映像を調べると、手紙の書き手であるトムとその恋人ベンは、ほとんど姿を変えないまま、何十年も離れた時間に現れていた。彼らは不死者なのか、それとも……。
俺が一番面白かったのは、調査の過程でエメットの前に現れた、ソーンという一種「野蛮な」女性とエメットの奇妙な関係である。彼女の不衛生とも思える乱雑さやだらしなさに、最初はエメットは嫌悪を覚えるが、共に調査を続けるうちに欠点に鈍感になり、とうとう一緒に暮らすまでになる。それに比べると、本筋であるはずの、時を超えるかに見える同性愛の恋人たちの話は、その神秘性にもかかわらずもう一つパンチがない。
また、アラン・チューリングの例に見られる通り、第二次世界大戦前後のイギリスでは同性愛は犯罪だったので、トムとベンの恋は非常に危険なものだったはずだが、そのスリリングさがもっと描かれても良かったのでは。
セ記事を書く
セコメントをする