2024-09-15
地球温暖化を主題にした、一種の近未来シミュレーション小説。温暖化対策のために国連が設置した通称「未来省」という組織のトップに立ったメアリー・マーフィーを中心に、エピソードを積み重ねる形で多面的に展開する。工学技術的な問題のほか、政治、経済、既得権益者の抵抗など様々な側面から問題が発生してくる。一般市民や気象災害難民の視点も取り入れている。解説で坂村健が書いているように、欠落も多いが、現時点では地球温高問題を扱ったフィクションとしては、最も総合的に全体像を描いているのではないかと思われる。
そして、未来省がそういった問題に対する対策には、現実に提案されているもののほかにこの作品独自の着想も数多い。氷河の進行速度を抑えるアイデアなど大変に面白いが、特に俺が面白かったのは、二酸化炭素の排出削減を裏付けとした新しいデジタル通貨「カーボンコイン」である。
坂村健が欠落として挙げたのは、日本の存在が極端に薄いこと、原子力特に核融合に関する記述がないことなどだが、俺は、グレタ・トゥーンベリをモデルにした人物を出しても良かったのではないか、と思った。まあ、すべてを盛り込もうと思ったら個人の手に余るし、長さも何倍にもなってしまうだろうが。
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