オクテイヴィア・E・バトラー著『血を分けた子ども』
2023-05-06


短編集。残酷な内容の作品が多い。ほとんどの作品はSFだが、SFにすることによって現実の残酷さが強調されてしまう作品が多い。
 「夕方と、朝と、夜と」は、遺伝的疾患によって自分自身を傷つけてしまう病気を描いているが、生まれる前に原因がある訳で本人には全く不条理な残酷さである。水見稜の『マインドイーター』は影響を受けているかな、と思う。いつも言うことだが、先に書いた方が偉いとか、真似だから駄目だとかいう話ではない。
 俺が一番強い印象を受けたのは「恩赦」。地球に植民地を築きつつある異星人に研究のために拉致された主人公。一旦解放されると、人類の裏切り者として徹底した虐待を受ける。人間の弱さや悪さや愚かさを直視した作品である。これもいつも言うことだが、一旦ここを直視しなければ希望を語ることはできない。
 オクテイヴィア・E・バトラーは今後邦訳が続くようで嬉しい。
[本]

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