ジョン・スコルジー著『ロックイン 統合捜査』
2021-01-28


17年 9月28日読了。
 意識は在るのに体を全く動かせなく成る感染症の世界的流行が発生した世界。患者はロボットの体を使って社会生活を営んでいた。解説に在るようにこれは障害者と運動補助技術の問題を極端化した着想だろうが、この作品世界では、それが新たな差別を呼んでいる。非常にタイムリーな設定だが、よく考えたら米国ではこの主題は何時でもタイムリーなのだった。ネイティブアメリカンの社会的不可視性なども描かれる。
 筋立ては、トリックを明かし犯人を追いつめるというミステリーの形式だが、患者達の存在が社会に及ぼした影響も読み処の一つと成る。重い主題だが陰鬱な雰囲気には成らず、伊藤計劃や宮内悠介のように突き詰めて考える事もなく、最後までユーモラスな雰囲気が失われずに、軽いエンターテインメントに纏まっている。それを好ましい気軽さと取るか物足りないと感じるかは意見の分かれる処であろう。
 患者である主人公も魅力的だが、ヴァンという乱暴な女性FBI捜査官がとても良い。
[本]

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