今西祐行著『浦上の旅人たち』
2020-02-24


15年12月17日読了。
 明治始めの隠れキリシタン弾圧の物語。歴史を物語風に語った読物としては良い物であろうし、その意味では岩波少年文庫に相応しい作品であろうが、小説としては人物に厚みが足りないし、筋立てにしても大きなうねりを感じさせる骨太さがある訳でもなく、息をも吐かせぬ波乱の展開がある訳でもない。
 改宗した信徒の心の葛藤がもっと描かれれば深みが出たのではないか。或いは、当時の明治政府にはキリシタン弾圧がどうしてそんなに重大問題なのか理解できず、欧米の非難の意味が判らなかった筈で、その辺りを書いても面白かっただろう。
 元々児童文学として書かれた物なので一般向け小説として評価しようとするのが無い物ねだりなのかも知れない。これを読んだ子供達に少しでも「信仰とは何か」という興味が湧いたなら優れた児童読物である。
[本]

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