2026-01-21
作家が自分の書いたデビュー前の日記を紹介し、それを現在の視点で解説したり分析したり批判したりするという構成。作家志望者らしい屈折した過剰な自意識、それと誠実であろう公正であろうとする姿勢、善とは何か悪とは何かを追求しようてする姿勢が印象に残る。
「価値観がどう変遷したかの俯瞰。得たものや失ったものの整理。かつての時代を振り返ること。自分にとって言葉とは何か。いろいろとポイントはありそうに思うけれど、読み返してみたところ、結局は生命そのもの----それも通常であれば発表されえないタイプの生命の息吹をお見せしたかっただけのような気がしてきた。つまり、恥ずかしくて、間違ってて、でもソウルだけは横溢していた昔の日記を」(p.322)。
確かに生命の息吹は横溢しているが、デビュー前ということもあり、その息吹は出口を求めて鬱屈し、暗く苦悩と悲しみの気配が漂う。
「ただ、著名人に対する視線は厳しかった。世界のどこかで紛争が勃発した際などには、作家は態度を表明しなければならないと考え、それをやらない者を監視し、心の中の「臆病者リスト」に入れたりもしていた。なんていうか、もうちょっと純粋だった。そして全体主義者的だった。赤の他人に自分と同様の行動を期待するのは、距離感というものを間違えているし、やはりそれは全体主義的であると言えるだろう」(p.10)。
「やりがいを持てと人は言うものの、やりがいというものはけっこうな割合で、人を溺れさせる重りにもなる」(p.61)。
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