2024-11-25
岩波少年文庫。若き森林警備隊員のバルナボは、守っている火薬庫が盗賊に襲われたとき、怖くなって逃げてしまう。彼が逃げたことは誰も知らないが、肝心な時にその場にいなかったことを上司に責められ、森林警備隊を辞めさせられる。山を離れたバルナボだが、恥の意識と山々への郷愁に苦しみ続ける。前半における主人公のバルナボの心情の描写が少なく、特に山々への愛情は描かれないため、山を追われたバルナボが山へ帰りたがる激しい郷愁がどのようなものなのか、もう一つはっきりしない。その代わりに、山の自然の描写は詳細であるばかりでなく、活き活きとして詩的である。そこから、読者はバルナボの気持ちをうっすらと推し量るしかない。もどかしいと言えばもどかしいが、その「輪郭のはっきりしなさ」が妙な幻想味を帯びて面白くもある。
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