。ボエル・ヴェスティン著『トーベ・ヤンソン 人生、芸術、言葉』
2023-09-02


トーベ・ヤンソンの伝記、研究書。
 ムーミンの成功以来、関連ビジネスや取材、ファンの訪問や手紙に忙殺されて、創作に集中できないと嘆く場面が何度も繰り返される。それでもムーミンビジネスなどを委託することはせず、全てを自分で管理し、事細かに注文を出したりする。この妙に頑なな性格は仕事や生活の全てに渡っていて面白い。
 作品に関しては、自由と孤独の問題、とくに芸術表現の主題からの分析が強調されており、それは重要な側面だと俺も思う。しかし俺には、ムーミン作品の背後に流れる不安感には「現実と虚構の境界の曖昧さからくる存在の不安」があるように思えてならない。いや、これは自分の興味に引き付け過ぎた読み方かな。
 いずれにしても「ムーミンは大人こそが読むべきだ」という従来からの俺の主張を補強する一冊である。
[本]

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