宮内悠介著『偶然の聖地』
2022-01-03


20年 2月23日読了。
 面白かった。ごく限られたものしかその存在を知らない「世界医」と呼ばれる人達が、人知れず世界に発生した不具合(バグ)を修正(デバッグ)している、というシミュレーション世界的設定。最大の不具合であるイシュクト山は、いつ現れるか消えるか判らない山である。この山にさまざまな思惑を持った者達が集まって来る。途中、語る者と語られる者が循環入れ子構造に成っているメタフィクション的な展開も含まれていて、俺好み。
 毎月五枚半、という連載形式のためもあり、あまり精緻な構築性はなく、断片が積み重ねられていく。その緩さも気持ち良い。全体に語り口はユーモラスなのだが、単行本化に際して加筆された膨大な注釈もとぼけていて楽しい。
 宮内悠介だから当然登場人物も皆個性的で活き活きと描かれる。頭の中でマインドマップ描いてる刑事に親しみを持つ。
 エンターテインメントしては纏まりを欠く事に成るけど、結末はなくても良かったんじゃないの。
[本]

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