シルヴァン・ヌーベル著『巨神覚醒』上下
2021-10-28


19年 8月21日読了。
 面白かった。ロンドンに突如現れた異星人の巨大ロボット。事の重大さを理解できず、人類内の政治的な争いに終始し、或いは軍事力に訴えようとする指導者達。皆目判らない異星人の意図。そんな中でも最悪の事態を回避しようと奔走する主人公達。しかし、更なるロボットが地球に現れ、殺戮がはじまる。
 主人公の一人であるインタビュアーと、異星人の子孫だというバーンズと名乗る男がどちらも謎めいていて面白い。
 物理学者ローズが死から蘇った真相、人類が手に入れた唯一のロボットであるテーミスのパイロット、カーラとヴィンセントの娘の存在など、いろんな事が同時に進行していて物凄い疾走感。終盤の、カーラの娘エヴァの大活躍も楽しい。
 『われらはレギオン』もそうだったが、人類の愚かしさを強調して描くパターンにはちょっと飽きてきた感じもある。しかしそれを描きたい気持ちも判る。現実の人類が愚かしく見えるからである。それは良く判るが、そろそろ「人類も捨てたもんでもない」という処を描いても良いころではないか。
 前巻の終わりで、ローズの蘇りの仕組みには、何か超時空的な現象が関っているのではないか、と予想していたのだが、割と単純なバックアップ・コピーだったので拍子抜け。異星人の意図も、もっと人間には理解できない隔絶した物であって欲しかった。
 と、無い物ねだりもたくさんあるが、全体としては、痛快なエンターテインメント。
[本]

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