大森望 日下三蔵編『年刊日本SF傑作選 折り紙衛星の伝説』
2019-12-26


15年 8月29日読了。
 終末期医療を扱った宮内悠介「薄ければ薄いほど」が読み応えある。「わたしたちが医療をネグレクトする時、医療もまたわたしたちをネグレクトしている」(p.262)という言葉などどきりとするし、深刻な主題であるにも拘らず、最後の一行は痛快である。諸星大二郎の漫画「加奈の失踪」の実験性には仰天する。円城塔「φ」も実験的な作品だが、既にアンソロジーで読んでいた。こういった社会的、実験的な先鋭性を持つ作品の他、草上仁「スピアボーイ」、オキシタケヒコ「イージー・エスケープ」などの正統的なエンターテインメントが収録されているのも嬉しい。短編賞受賞作も良くできたエンターテインメントだが、上手過ぎて物足りなかった。
[本]

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