笙野頼子著『説教師カニバットと百人の危ない美女』
2019-10-06


15年 2月14日読了。
美人信仰を批判したが故に女性作家・八百木のもとに、結婚願望が異常に強い女たちの集団「巣鴨こばと会」から毎日のようにファックスが届く。ファックスと郵便物は嵐のように殺到し、巣鴨こばと会と八百木は相互に批判(と言うか誹謗中傷)を繰り返すが、相互に根本的変化を与える事なく擦れ違っていく。そういう意味では不毛な嵐だった訳だが、言葉の(グロテスクな)豊饒さは残した。
 特に独特の「醜女の社会分析」或いは「ブス・ジェンダー論」とでも言うべき理論は面白い。独り善がりな部分も多くどこまで一般化できるか判らないが、そんな事は作者も承知で、この作品を書いているという設定の主人公八百木とは別に、笙野頼子が登場して批判的な事を言ったりする。しかし決してメタフィクション的な主題には向かわず、ひたすら不毛でグロテスクな言葉の(黒ミサ的百鬼夜行的)祝祭を繰り広げる。
[本]

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