『笙野頼子・初期作品集1極楽』
2019-10-02


15年 1月20日読了。
 初期作品三編収録。文章が面白い。癖に成るなこれは。三編とも主人公は自閉的な異常性格者。「皇帝」の主人公ははっきりと統合失調症である。「極楽」と「皇帝」の主人公がこのように感じ行動する筋道は判るが共感はできない。ところが「大祭」の幼い主人公には感情移入してしまうので怖い。
 「皇帝」の主人公は、何か思い出したくない目を逸らしたい記憶があって、それを抑圧するために狂気に逃げ込んでいるのが最初から明らかである。そして、その記憶がどういう物なのかが徐々に明らかに成っていくという「謎解き」の構成に成っている。現れるイメージや奇妙な論理とも言えない論理が奇怪なのでこのままでも充分面白いが、最後に「謎解き」の構造までも覆す上位のどんでん返しがあったらもっと面白かろうと思った。結末にカタルシスを求めるのは純文学的じゃないか。
[本]

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