イヴ・エンスラー著『ヴァギナ・モノローグ』
2019-07-19


14年 8月16日読了。
 著者は米国の劇作家で詩人。年齢も人種も様々な女性二百人以上に女性器について訊ねたインタビューを元に書いた一人語り形式の芝居で高く評価された。本書はその舞台を元にしたもの。浮かび上がって来るのは米国社会における女性の身体性に対する抑圧。その抑圧は習慣化され殆ど無意識化されている。ここに描かれているのはその女性の身体性を意識化し、性の聖性(あっ語呂合わせだ)を復権する物語と言える。こう言うとよくあるフェミニズム運動の本と思われてしまうかも知れない。そういう面も確かにあるが、語られる言葉は切実でありながら詩的でイメージ豊かである。
 俺は以前から、男性は女性よりも意識に於いて身体性が低い(薄いと言うべきか)と思ってきた。単純に言うと、女性は産む性であり、生理があるから、男性よりも強く自らの身体性を感覚的に意識している(せざるを得ない)であろう。男が女よりもセックスや暴力に強い関心を示し、自動車や銃器で身体性を拡張する事に憧れるのは、無意識に「失われた身体性」を回復しようとするためではなかろうか、と思っていたのである。
 今でもそれが大きく間違っているとは思わぬが、本書に依って、女性の身体性の社会的抑圧という視点が欠けていた事に気付かされた。迂闊にも程があるが、こういう問題に男が気付きにくいのは当然とも言える。フェミニズムに頑張って貰いたい処である。

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